【栄養の基本】乳幼児・幼児期のカルシウム:安全な食材と吸収率アップの献立
お子様の成長期において、カルシウムは骨や歯を丈夫にするために非常に重要な栄養素です。特に乳幼児期から幼児期にかけては、体の基礎を作る大切な時期であり、十分なカルシウム摂取がその後の健康に大きく影響します。
しかしながら、「どれくらいの量が必要なの」「どんな食材から摂ればいいのか」「どうすれば効率よく吸収できるのか」といった疑問や不安をお持ちの保護者様もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、乳幼児・幼児期のお子様にとってのカルシウムの重要性とその目安量、安全な食材選びのポイント、そして吸収率を高める調理や食べ合わせの工夫について解説します。日々の献立作りの一助となれば幸いです。
乳幼児・幼児期にカルシウムが大切な理由と目安量
カルシウムは、主に骨や歯を形成する重要なミネラルです。体のカルシウムのほとんどは骨や歯に蓄えられており、お子様の健やかな成長には欠かせません。また、筋肉の収縮や神経伝達、血液凝固など、生命維持に関わる様々な生理機能にも関与しています。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、乳幼児・幼児期のカルシウムの推奨量または目安量は以下の通りです。
- 生後0〜5ヶ月: 200mg(目安量)
- 生後6〜11ヶ月: 250mg(目安量)
- 1〜2歳: 400mg(目安量)
- 3〜5歳: 550mg(推奨量)
これはあくまで目安であり、個々の成長発達や活動量によって必要な量は異なります。これらの数値を参考にしつつ、日々の食事でバランスよく摂取することを心がけることが大切です。
カルシウムを多く含む安全な食材と選び方
カルシウムは、特定の食材に偏らず、様々な食品から摂取することが理想的です。乳幼児・幼児期のお子様が安全に食べられる、カルシウムを多く含む代表的な食材と選び方のポイントをご紹介します。
牛乳・乳製品
牛乳、ヨーグルト、チーズなどはカルシウムの主要な供給源であり、吸収率が高いという特長があります。
- 選び方と与え方:
- 牛乳は1歳を過ぎてから、少量ずつ様子を見ながら与えるのが一般的です。最初はフォローアップミルクや育児用ミルクで補うことも有効です。
- ヨーグルトは離乳食中期頃から無糖のプレーンタイプを選び、加熱せずにそのまま与えることができます。
- チーズは塩分が控えめの、お子様向けやプロセスチーズを少量から試してください。加熱調理に使うのも良いでしょう。
- 加工品であるため、原材料や添加物の表示を確認し、できるだけシンプルなものを選ぶことをお勧めします。
魚介類
骨ごと食べられる小魚(しらす干し、いわし、桜えびなど)は、非常に豊富なカルシウム源です。
- 選び方と与え方:
- しらす干しなどは塩分が多い場合があるため、熱湯をかけるなどして塩抜きをしてから使用します。
- 骨は硬さや大きさによって危険な場合があるため、必ず取り除くか、完全に粉砕できる状態まで加熱・調理してください。離乳食期にはすりつぶす、ペースト状にするなどの工夫が必要です。
- 鮮度の良いものを選び、適切に保存・調理を行うことで食中毒のリスクを減らします。旬の魚は栄養価も高くおすすめです。
大豆製品
豆腐、納豆、高野豆腐、油揚げなどは、植物性カルシウムの供給源です。
- 選び方と与え方:
- 豆腐は離乳食初期から始められます。舌触りが滑らかで消化も良い食品です。
- 納豆は離乳食後期頃から、ひき割りタイプや細かく刻んだものを選び、粘りが強い場合は少量のお湯やだしでのばして与えます。タレは塩分が多いので使用を控えましょう。
- 油揚げや高野豆腐は、小さく刻んで煮物や汁物に入れるとカルシウムが手軽に摂れますが、油分が多い場合があるので少量に留めること、適切な下処理(油抜き)を行うことが大切です。
- 国産大豆を使用しているものや、シンプルな原材料のものを選ぶとより安心です。
野菜・海藻類
小松菜、カブの葉、モロヘイヤなどの葉物野菜や、ひじき、わかめなどの海藻類にもカルシウムが含まれています。
- 選び方と与え方:
- これらの食材に含まれるカルシウムは、乳製品などに比べて吸収率がやや低い傾向がありますが、ビタミンKや食物繊維など他の栄養素も豊富に含んでいます。
- アクが強い野菜は、しっかりと下茹でをしてアク抜きを行います。
- 海藻類は乾燥タイプを使い、戻してから細かく刻んで使用します。離乳食期は消化しにくい場合があるので、少量から試すか、完全にすりつぶしてから与えます。ひじきなどの乾物は、水で戻す際に含まれるヒ素などの有害物質を減らすため、表示通りにしっかり戻すことが推奨されています。
- 農薬の使用を減らした野菜や、信頼できる産地の海藻類を選ぶことも安心に繋がります。
カルシウムの吸収率を高める工夫
カルシウムは、摂取するだけでなく、体内でしっかりと吸収されることが重要です。カルシウムの吸収率を高めるための食べ合わせや調理のヒントをご紹介します。
ビタミンDと一緒に
ビタミンDは、腸管でのカルシウムの吸収を促進する働きがあります。
- ビタミンDを多く含む食材: 鮭、いわし、さんま、きのこ類(干ししいたけなど)
- 工夫: カルシウムが豊富な食材とビタミンDが豊富な食材を組み合わせて献立に取り入れると効率的です。例えば、しらす干しと干ししいたけを合わせた炊き込みご飯や、鮭と小松菜のミルク煮などが考えられます。また、適度な日光浴も体内でのビタミンD生成を助けます。
ビタミンKと一緒に
ビタミンKは、カルシウムを骨に取り込むのを助ける働きがあります。
- ビタミンKを多く含む食材: 納豆、小松菜、ほうれん草、ブロッコリーなど
- 工夫: 納豆に細かく刻んだ小松菜を混ぜる、小松菜のおひたしにしらす干しを添えるなど、ビタミンKを含む食材とカルシウム源を組み合わせるのが効果的です。
リンとのバランスに注意
リンは骨や歯を作る上でカルシウムと同様に重要なミネラルですが、リンを過剰に摂取すると、カルシウムの吸収を妨げたり、体内のカルシウムバランスを崩したりする可能性があります。
- 注意点: 加工食品にはリン酸塩が多く含まれていることがあります。過剰摂取にならないよう、加工品の摂りすぎには注意が必要です。自然な食品からバランス良く摂取することが望ましいです。
調理法の工夫
- 酢やクエン酸: 酢やレモンなどの酸味成分は、カルシウムを溶け出しやすくし、吸収率を高める効果があると言われています。酢を使った和え物や、魚のレモン風味焼きなどもおすすめです。
- 加熱: 骨ごと食べられる小魚などは、圧力鍋で煮込むなどして骨まで柔らかくすることで、カルシウムを効率よく摂取できます。
カルシウム補給に役立つ献立・レシピ例
手軽にカルシウムを補える、乳幼児・幼児期向け(離乳食完了期〜幼児食を想定)の献立例や簡単なレシピをご紹介します。アレルギーがある場合は、代替食材で対応してください。
献立例:和風カルシウムごはん
- 主食: しらすと刻み小松菜の炊き込みご飯(しらす干し、小松菜、米、だし汁、醤油少量)
- 主菜: 豆腐と鶏ひき肉のあんかけ(豆腐、鶏ひき肉、人参、玉ねぎ、だし汁、片栗粉少量、醤油少量)
- 副菜: ひじきと枝豆の煮物(乾燥ひじき、枝豆、だし汁、醤油少量、みりん少量)
- 汁物: わかめと豆腐の味噌汁(乾燥わかめ、豆腐、だし汁、味噌少量)
- デザート(オプション): ヨーグルト
簡単レシピ:しらすとブロッコリーのミルク煮
材料:
- 釜揚げしらす:10g
- ブロッコリー(穂先):15g
- 牛乳:50ml
- 水:大さじ2
- お好みの野菜(人参、玉ねぎなど):少量(刻む)
作り方:
- ブロッコリーは柔らかく茹でて刻むか、すりつぶします。人参や玉ねぎも柔らかく茹でて刻みます。
- しらすは必要であれば熱湯をかけて塩抜きし、細かく刻みます。
- 小鍋に牛乳、水、刻んだ野菜としらすを入れて火にかけます。
- 沸騰しないように注意しながら温め、全体が柔らかくなったら完成です。
- 月齢に合わせて、とろみをつける場合は少量の水溶き片栗粉で調整してください。
このミルク煮は、牛乳と小魚、野菜からカルシウムを、ブロッコリーからビタミンKやビタミンCなどを摂取できます。パン粥やご飯にかけても美味しくいただけます。
まとめ
乳幼児・幼児期のカルシウム摂取は、お子様の健やかな成長のために非常に重要です。牛乳・乳製品、魚介類、大豆製品、野菜、海藻類など、様々な食品からバランスよく摂取することを心がけましょう。
また、ビタミンDやビタミンKを含む食材との組み合わせや、酢を使った調理法などを取り入れることで、カルシウムの吸収率を高める工夫もできます。
日々の献立にこれらの食材を上手に取り入れ、お子様の成長をしっかりとサポートしてまいりましょう。食の安全に配慮し、お子様にとって安心でおいしい食事を提供することが、明るい未来への一歩となります。