乳幼児・幼児期に安心な調味料:塩・砂糖・醤油などの安全な選び方と使い方
はじめに
お子様の成長に伴い、離乳食から幼児食へと進む中で、大人と同じ食事からの取り分けや、調理に調味料を使う機会が増えてまいります。この時期は味覚形成にとって非常に大切な時期であり、また、内臓機能もまだ発達途上です。そのため、どのような調味料を選び、どのくらいの量を使えば良いのか、ご不安を感じる保護者様もいらっしゃるかと存じます。
「キッズ未来ごはんナビ」では、お子様の安全で健やかな成長をサポートするため、乳幼児期から幼児期にかけての食事における基本調味料の考え方、安全な選び方、そして適切な使い方について専門的な視点からご紹介いたします。安心できる調味料選びと適切な使用は、お子様の健康維持と豊かな味覚を育むことに繋がります。
なぜ子供の調味料に注意が必要なのか
乳幼児期から幼児期のお子様に対して、調味料の使用にはいくつかの注意点があります。
- 塩分の過剰摂取: 子供の内臓、特に腎臓はまだ十分に発達していません。塩分(ナトリウム)を過剰に摂取すると、体に負担がかかる可能性があります。また、幼い頃から濃い味に慣れると、将来的な生活習慣病のリスクを高めることも指摘されています。
- 糖分の過剰摂取: 砂糖などの糖分も、取りすぎは虫歯や肥満のリスクを高めます。また、甘い味に慣れすぎると、素材本来の味や甘みを感じにくくなる可能性がございます。
- 味覚形成への影響: この時期に経験する味は、その後の食の好みに大きく影響します。素材本来の味や、だしの旨味などを中心とした薄味に慣れることで、多様な食材を受け入れる豊かな味覚が育まれます。
- 食品添加物への配慮: 市販の調味料には、保存料や着色料、人工甘味料、化学調味料(アミノ酸等)などの食品添加物が含まれている場合があります。これら添加物に対するお子様の感受性は大人と異なる可能性があり、できる限り使用を控えたいと考える保護者様も少なくありません。
これらの理由から、お子様の食事に使用する調味料は、種類や量、含まれる成分に十分配慮することが重要になります。
基本調味料の種類別:安全な選び方と使い方
ここでは、家庭でよく使用される基本的な調味料について、お子様向けに選ぶ際のポイントと使い方をご紹介します。
塩
- 選び方:
- 原材料: 海水のみを原料とし、伝統的な製法(天日干しや釜炊きなど)で作られたミネラルを含む自然塩がおすすめです。精製塩は塩化ナトリウムの純度が高い一方で、ミネラル分がほとんど含まれていません。パッケージの原材料表示や製造方法を確認しましょう。
- 添加物: 固結防止剤などが無添加のものを選びましょう。
- 使い方:
- 使用量: 少量でも味を感じやすいため、ごく少量から使用を開始します。離乳食完了期頃から風味付け程度に使用できますが、基本的には素材の味やだしで十分な場合が多いです。
- タイミング: 調理の仕上げにごく少量加えることで、塩分量を調整しやすくなります。
- 注意点: 塩分を多く含む加工食品(ハム、ソーセージ、練り物など)や、汁物(スープ、味噌汁)の摂りすぎには注意が必要です。
砂糖
- 選び方:
- 種類: 白砂糖(上白糖)は精製度が高くミネラルがほとんど含まれません。きび砂糖やてんさい糖、黒砂糖などはミネラル分を含みますが、種類によっては風味が強く、また、健康への影響は種類よりも「量」が重要です。必須ではありませんが、使用する場合は精製度の低いものを選ぶ保護者様もいらっしゃいます。
- 添加物: 不要な添加物が含まれていないか確認しましょう。
- 使い方:
- 使用量: 基本的に料理に砂糖を加える必要はありません。素材本来の甘み(野菜の甘みなど)を活かしましょう。甘みが必要な場合は、少量のはちみつ(1歳未満のお子様には絶対に与えないでください)やメープルシロップ、果物の甘みなどを少量利用することも考えられます。
- 注意点: おやつや飲み物に含まれる糖分に特に注意が必要です。加糖されたジュースや市販のお菓子は控えめにしましょう。
醤油・味噌
- 選び方:
- 原材料: 丸大豆、小麦(味噌の場合は米や麦)、塩、麹といったシンプルな原材料で、長期熟成された「本醸造」や「天然醸造」と表示されているものを選びましょう。これらは化学的に分解されたものではなく、酵母や乳酸菌の働きでじっくりと作られています。
- 添加物: アルコール以外の添加物(着色料、甘味料、保存料、化学調味料など)が含まれていないものを選びましょう。
- 塩分: 減塩タイプもありますが、それ以上に「使用量」を控えることが重要です。
- 使い方:
- 使用量: 離乳食完了期頃から、ごく少量(数滴〜小さじ1/4程度)から風味付けに使用できます。全体に味をつけるのではなく、煮物なら煮汁をごく少量かける、和え物なら和え衣にごく少量混ぜる、といった工夫が有効です。
- 注意点: 塩分量が多い調味料です。少量でも味がしっかりつきますので、使いすぎには十分注意が必要です。
酢
- 選び方:
- 原材料: 米酢、穀物酢、りんご酢など種類がありますが、原材料がシンプルで、醸造過程に化学的な処理が少ないものを選びましょう。例えば米酢なら「米」のみを原料とした純米酢などが挙げられます。
- 添加物: 甘味料や酸味料、化学調味料などが含まれていないか確認しましょう。
- 使い方:
- 使用量: 幼児期になり、酸味に慣れてきたら少量ずつ使用できます。大人のように酸味を効かせるのではなく、隠し味として少量加えることで、塩分を控えても味に深みが出たり、食材が柔らかくなったりする効果が期待できます。
- 注意点: そのまま飲ませるような使い方は避け、加熱調理などに少量加えるのが安全です。
みりん・料理酒
- 選び方:
- みりん: 餅米、米麹、本格焼酎のみを原料とし、長期熟成された「本みりん」を選びましょう。「みりん風調味料」は水飴やブドウ糖液糖などにうまみ調味料や酸味料などを添加して作られており、糖分や添加物が多く含まれる傾向があります。
- 料理酒: 米、米麹、塩のみを原料とした「純米料理酒」がおすすめです。清酒(日本酒)でも構いません。塩分が含まれていないタイプを選ぶと、塩分量の調整がしやすくなります。(ただし、飲用できないように塩分が添加されている「加塩料理酒」も多く販売されており、こちらは塩分摂取に繋がるため注意が必要です。)
- 使い方:
- 使用量: 少量を使用し、加熱してアルコール分をしっかり飛ばします。みりんは少量でも上品な甘みと照りを、料理酒はコクと旨味を与え、食材を柔らかくしたり臭みを消したりする効果があります。
- 注意点: アルコール分が残らないよう、加熱調理時に使用し、十分に加熱時間を確保してください。
調味料の使用を控えめにする工夫
調味料を減らしても美味しく仕上げるための工夫をご紹介します。
- だしの活用: 昆布やかつお節、煮干し、しいたけなどで丁寧にとっただしには、食材の旨味を引き出し、薄味でも満足感を得られる効果があります。市販の顆粒だしを使用する場合は、無添加や減塩のものを選び、使用量に注意しましょう。
- 素材本来の味を活かす: 新鮮で旬の食材は、それ自体が豊かな風味を持っています。素材の味を活かす調理法(蒸す、焼くなど)を選び、過度な味付けを避けることが大切です。
- 薬味や香りの活用: 生姜、にんにく(少量)、ごま、青のり、かつお節、海苔などを風味付けに使うと、調味料に頼らずに味のアクセントをつけることができます。(ただし、これらも適量に留め、お子様に合わせて調整してください。)
- 調理法の工夫: 煮物の場合、煮汁を全て食べさせるのではなく、具材のみを与える、あんかけにして絡める量を調整するなど、調理法で塩分摂取量をコントロールできます。
市販の子供向け調味料について
近年、子供向けの醤油や味噌、ケチャップなどが販売されています。これらは塩分や糖分が控えめに作られている場合が多く、活用の一つの選択肢となります。ただし、中にはうまみ調味料や甘味料などが添加されている製品も見られますので、パッケージの原材料表示をよく確認し、シンプルな原材料のものを選ぶことをおすすめいたします。また、これらの製品を使用する場合でも、与えすぎは避け、適量を心がけることが重要です。
まとめ
お子様の食事における調味料選びと使い方は、その健やかな成長と将来の食生活の基盤を築く上で非常に重要です。塩分や糖分、食品添加物に配慮し、シンプルで安心できる調味料を少量から使用することで、お子様は素材本来の味やだしの旨味を活かした薄味に慣れ、豊かな味覚を育むことができます。
ご紹介した調味料の選び方や使い方のヒントを参考に、日々の献立作りにお役立ていただければ幸いです。無理なくできる範囲で、お子様の健康を第一に考えた安心・安全な食事作りを実践してまいりましょう。